この記事の3つのポイント
抜毛症のサインと支援について、LITALICO発達ナビ・世田谷用賀クリニックなどの情報をもとにまとめました。
- 結論から言うと:抜毛症は認知行動療法(ハビットリバーサル法)などの治療法が確立されており、早期の専門家相談で改善が期待できます。…
- ただし注意点も:抜毛症は精神疾患の一つであり、家庭だけでの対応には限界があります。必ず児童精神科や心療内科の専門家に相談してください。…
- 対象年齢:6〜9歳のお子さんを持つ保護者向け
各機関の見解を比較
このテーマについて、主要な機関の見方は以下のように整理できます。
| 立場 | 機関・出典 | 見解の要旨 |
|---|---|---|
| 積極的 | LITALICO発達ナビ | 抜毛症は認知行動療法(ハビットリバーサル法)などの治療法が確立されており、早期の専門家相談で改善が期待できます。 |
| 中立的 | 世田谷用賀クリニック | 抜毛の程度や原因は個人差が大きく、ストレスや発達特性など複数の要因が絡むため、一概に対処法を決められません。 |
| 慎重派 | 一部専門家 | 抜毛症は精神疾患の一つであり、家庭だけでの対応には限界があります。必ず児童精神科や心療内科の専門家に相談してください。 |
見解の詳細
積極的な立場: 抜毛症は認知行動療法(ハビットリバーサル法)などの治療法が確立されており、早期の専門家相談で改善が期待できます。
中立的な立場: 抜毛の程度や原因は個人差が大きく、ストレスや発達特性など複数の要因が絡むため、一概に対処法を決められません。
慎重な立場: 抜毛症は精神疾患の一つであり、家庭だけでの対応には限界があります。必ず児童精神科や心療内科の専門家に相談してください。
詳しい解説
抜毛症(トリコチロマニア)とは
抜毛症は、自分の髪の毛やまつげ、眉毛などの体毛を繰り返し抜いてしまう疾患です。DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では「強迫症および関連症群」に分類されており、正式には「抜毛症(トリコチロマニア)」と呼ばれます。
抜毛症には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 焦点化型(意識的タイプ):抜毛する前に緊張や不快感を自覚しており、抜いた後に一時的な安堵感を得る。本人が「やめたいのにやめられない」と感じていることが多い
- 自動化型(無意識タイプ):テレビを見ているとき、宿題をしているとき、ぼんやりしているときなどに、無意識のうちに毛を抜いている。本人が気づいていないことも多い
小学校低学年から思春期にかけての子どもでは、自動化型が多く見られます。6〜9歳の子どもの場合、宿題中や授業中に無意識に髪を触り始め、そのまま抜いてしまうケースが典型的です。
好発年齢と頻度
抜毛症は小学校低学年(6〜8歳頃)から思春期にかけて発症することが多いとされています。6〜9歳の時期は学校生活への適応、友人関係の変化、学習の難易度上昇など、子どもにとってストレスが増える時期であり、抜毛行為が現れやすい年齢帯です。
女児にやや多いとされていますが、男児にも見られます。低年齢で発症した場合は比較的予後がよいとされる一方で、対応が遅れると長期化するケースもあります。
抜毛症の原因
抜毛症の原因はひとつではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。
心理的要因
- ストレス:学校でのトラブル、友人関係の悩み、家庭内の緊張、きょうだいとの葛藤など
- 不安:テストや発表への不安、親から離れることへの不安、新しい環境への適応困難
- 退屈・手持ち無沙汰:特に自動化型では、何もすることがないときに無意識に抜いてしまう
発達特性との関連
- ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)のある子どもでは、感覚刺激を求める行動として抜毛が出現することがある
- 感覚過敏がある場合、特定の毛の質感が気になって抜いてしまうこともある
神経学的要因
- 脳内のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが関与している可能性が指摘されている
- 抜毛行為によって脳内に一時的な快感物質が分泌され、行動が強化されるという仕組みがある
家庭で気づける具体的なサイン
6〜9歳の子どもが抜毛症を発症した場合、以下のようなサインが見られることがあります。
| サイン | 具体例 |
|---|---|
| 頭髪のまだら状の薄毛 | 頭頂部や前頭部など特定の場所が薄くなっている |
| まつげ・眉毛の減少 | 片側だけまつげが短い、眉毛の一部が欠けている |
| 勉強机周辺の抜け毛 | 宿題をする場所に不自然に多くの毛が落ちている |
| 帽子や髪型へのこだわり | 薄くなった部分を隠すために帽子を被りたがる、髪型を頻繁に変える |
| 手の動き | テレビを見ながら、読書中に無意識に髪を触り続けている |
| 毛を食べる行為 | 抜いた毛を口に入れる(食毛症を併発している場合は医療機関への相談が急務) |
保護者が最初に気づくきっかけとして多いのは、「子どもの机の周りに毛が落ちている」「頭の一部が薄くなっている」の2つです。
家庭での対応
1. 叱らない・指摘しすぎない
抜毛行為を見つけたとき、「やめなさい」と強く叱ったり、繰り返し指摘したりするのは逆効果です。本人も好きでやっているわけではなく、叱責はかえって緊張やストレスを増し、抜毛を悪化させることがあります。
- 抜いている最中に気づいても、大声で注意しない
- 「また抜いてる」と頻繁に指摘しない
- 髪が薄くなっていることを責めない
2. ストレス源を把握する
6〜9歳の子どもが抱えやすいストレスを整理し、思い当たるものがないか確認します。
- 学校の友人関係に変化はないか
- 授業や宿題の量が負担になっていないか
- 習い事が多すぎないか
- 家庭内で大きな変化(引っ越し、きょうだいの誕生、親の不和など)がなかったか
- 担任の先生との関係はどうか
3. 手を使う活動を増やす
特に自動化型の抜毛には、手が空いているときに代わりの行動を提供することが有効です。
- 粘土遊びやスクイーズなどの感触遊び
- 折り紙やあやとり
- 宿題中に握れるストレスボール
- 指先を使うパズルやブロック
4. 子どもと一緒に過ごす時間を確保する
一人でいる時間が長いと抜毛が増える傾向があります。特に宿題の時間は、そばで見守るだけでも抜毛の予防につながります。
- 宿題はリビングで一緒に
- 就寝前に絵本の読み聞かせや会話の時間をとる
- 休日は体を動かす活動を取り入れる
5. 子どもの気持ちを聴く
6〜9歳の子どもは、自分の感情をうまく言語化できないことがあります。「どうして抜くの?」と直接問い詰めるのではなく、日常の中で自然に気持ちを聴く姿勢が大切です。
- 「最近学校どう?」と軽く聞いてみる
- 「嫌なことがあったら教えてね」と伝えておく
- 本人が話し始めたら、途中で遮らずに最後まで聴く
治療法
ハビットリバーサル法(習慣逆転法)
抜毛症に対して最も効果が実証されている治療法です。認知行動療法の一種で、以下のステップで進めます。
- 気づきの訓練:抜毛が起きやすい状況や前兆(髪を触る、特定の姿勢をとるなど)を本人が自覚できるようにする
- 拮抗反応の練習:抜毛の衝動が出たときに、代わりの行動(こぶしを握る、手を太ももの下に置くなど)を行う
- 動機づけの強化:抜毛を我慢できたことを記録し、保護者が適切にほめる
6〜9歳の子どもの場合は、ゲーム感覚で取り組めるよう工夫することが多く、シールやスタンプで記録をつける方法も使われます。
薬物療法
抜毛症の背景に強い不安や強迫症状がある場合、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬物療法が検討されることがあります。ただし、小児への投薬は慎重に行われるのが一般的であり、薬だけで治療するのではなく、認知行動療法と併用されることが多いです。
環境調整
学校や家庭の環境を見直すことも治療の一部です。
- 学校に状況を伝え、担任やスクールカウンセラーと連携する
- 宿題の量が過剰であれば調整を相談する
- 子どもの座席位置や学習環境について配慮を依頼する
受診先の目安
抜毛症に気づいたら、まずは以下の専門機関への相談を検討してください。
| 受診先 | 特徴 |
|---|---|
| 児童精神科 | 子どもの精神疾患を専門に診る。抜毛症の診断・治療に最も適している |
| 心療内科(小児対応) | 心身の症状を総合的に診る。児童に対応しているか事前に確認が必要 |
| 発達外来 | 発達特性が背景にある場合、発達検査と併せて対応してもらえる |
| 小児科(かかりつけ) | まず相談して、適切な専門機関への紹介状をもらう入口として有効 |
| 皮膚科 | 頭皮の炎症や脱毛の鑑別が必要な場合に受診。抜毛症と円形脱毛症の区別がつかないときにも |
「どこに行けばいいかわからない」場合は、かかりつけの小児科に相談するのが一番の近道です。児童精神科は予約が数か月待ちになることも多いため、早めに動くことが大切です。
よくある質問
Q. 抜毛症は自然に治りますか?
A. 6〜9歳で発症した場合、軽度であれば数か月〜1年程度で自然に落ち着くケースもあります。ただし、長期化するリスクもあるため、抜毛が2〜3週間以上続く場合や、目に見えて薄毛が広がっている場合は、専門機関への相談をおすすめします。
Q. 抜毛を見つけたとき、子どもにどう声をかければいいですか?
A. 「髪を抜いているのを見ると心配になるよ」と、責めるのではなく心配している気持ちを伝えてください。「やめなさい」ではなく、「手が寂しいのかな?何か握るもの用意しようか」のように、代替行動を提案するのも有効です。
Q. 学校に伝えるべきですか?
A. 伝えることをおすすめします。担任やスクールカウンセラーに状況を共有することで、授業中の配慮(座席の位置、プレッシャーの軽減)や、クラスメイトからの指摘への対応を検討してもらえます。ただし、伝える範囲はお子さんの気持ちも確認した上で決めてください。
相談できる窓口
| 窓口 | 連絡先 | 対応時間 |
|---|---|---|
| こどもの救急 | #8000 | 夜間・休日 |
| 児童相談所 | 189 | 24時間 |
| 子育て支援センター | お住まいの市区町村 | 平日日中 |
| かかりつけ小児科 | ー | 診療時間内 |
この記事のまとめ
抜毛症のサインと支援について、LITALICO発達ナビと世田谷用賀クリニックなどの専門情報をもとに解説しました。
ポイントの振り返り:
- 抜毛症はDSM-5で「強迫症および関連症群」に分類される疾患で、焦点化型と自動化型の2タイプがある
- 小学校低学年は発症しやすい時期であり、叱責は逆効果。ストレス源の把握と代替行動の提供が家庭でできる対応の柱
- ハビットリバーサル法など効果が実証された治療法があるため、早めに児童精神科や心療内科に相談することが回復への近道
不安があれば、まずかかりつけの小児科に相談し、専門機関への橋渡しをしてもらいましょう。
大切なお知らせ: この記事は専門機関の発信情報をもとに012.kids編集部が独自にまとめたものです。お子さまの個別の状況については、かかりつけ医や専門家にご相談ください。
